山田詠美を好きな女の子。

ぼくは勉強ができない (新潮文庫)
今唐突に思い出したんだけど、大学時代の話。
留学生と付き合ってる女友達がいて、なんかみんなで集まってるところに彼氏が通りがかったら、突然パーっと走っていって英語で会話してまたパーっと帰ってきて猛烈に話し始めたりしてるのね。で、大学の頃の俺って今の自分よりずっとやる気なくって、なんかそんなバイタリティがすごく眩しく見えて、でちょうど高校の頃読んだ『ぼくは勉強ができない』がストライクだった関係から山田詠美をちょこちょこ読むようになってたので、
「なんだかあれだね、君は山田詠美みたいな娘だね」
 とボソリと呟いたら、怒ったねその娘は猛烈に。烈火のごとく。決然と立ち上がって、
「なにそれ!? それはあたしが外人の男が大好きな女だって、そう言いたいわけ!?」
 と僕に向かって指を突きつけんばかりに抗議したんですよ。もう僕はすっかり面食らっちゃって、いやいやそうじゃなくって、つまり僕は君のバイタリティがすごいなあという意味のことを言いたかったんですよ・・・と訥々と説明したらすっかり機嫌が良くなって、
「ああそうか、そうなんだ。君は結構ちゃんと山田詠美を読んでるんだね。オトコノコには珍しい人なんだね」
 と心底嬉しそうに言って、俺はいつからこの娘の持ってるような情熱を失くしちゃったんだっけか? とぼんやり思ったんだよなあ、あの時。